「園長がベテラン保育士と衝突して、現場の空気が最悪になっている」
「若手が人間関係に悩み、突然『退職願』を出してきた」
保育・学童保育の施設を運営する法人の経営者や本部のマネージャー、そして園長先生の多くが、こうした「現場の人間関係」と「突発的な離職」に頭を悩ませています。
厚生労働省のデータを見ても、保育士の離職理由のトップは常に「職場の人間関係」です。
しかし、多くの現場や本部が、ギスギスした空気を変えるために「もっとコミュニケーションを増やそう」「アットホームな職場を作ろう」といった、実効性のない対策に終始しています。
保育コンサルタントの杉江海原(すぎえ うなばら)です。
私はこれまで、企業主導型保育所や認可保育所など、計17施設・総勢260名以上のスタッフを統括するスーパーバイザー(SV)やマネージャーを歴任してきました。
女性中心、かつ閉鎖的になりがちな保育の現場において、人間関係を理由にした離職をゼロにするために必要なのは、精神論ではありません。
現場の職種や「個人の性格」を徹底的に考慮した、ロジカルなマネジメントの仕組みです。
今回は、私が実際にマネージャーとして現場の崩壊を防ぎ、離職を食い止めた「2つの生々しい実例」を交えながら、現場が定着するチームビルディングの鉄則をお伝えします。
実例1:上からの指示を嫌う「孤高の園長」が心を開き、ワンチームになった瞬間
本部(マネージャー)と現場(園長)の確執は、多くの法人で起こる深刻なトラブルです。
私が担当したある園の園長先生は、非常にプライドが高く、「本部の人間から上から目線で指示されること」を極激に嫌う方でした。
最初のうちは心を開いてくれず、私が訪問するたびに、感情的な言葉をぶつけられることも少なくありませんでした。
ここで多くのマネージャーは、「本部の方針に従ってください」と正論でねじ伏せようとするか、あるいは訪問を躊躇して距離を置いてしまいます。しかし、それではチームは崩壊します。
私が取った行動は、真逆でした。
①「月に2回」の定期訪問と対面面談を、何があっても絶対に継続すること感情的に拒絶されても、直接顔を合わせることを最優先し、泥臭く足を運び続けました。
②「指示」を一切捨て、責任だけを本部に引き受ける姿勢を示すこと 私はその園長先生に、何度もこう伝え続けました。 「私から園長先生への指示は何もありません。現場のことはすべて信頼して任せています。ですから、何かあったときだけ私に言ってください。責任は、私が一緒に取りますから。」
「指示はしないが、盾にはなる」というスタンスを貫いた結果、その園長先生の態度は劇的に変わりました。本部の人間を「監視役」ではなく「味方」だと認識してくれたのです。
最後には、園の大きな行事に「サンタクロース役」として招待されたり、遠足の付き添いを個人的に頼まれたりするほど、深い信頼関係を築くことができました。
【鉄則1】
チームビルディングとは、全員に同じルールを押し付けることではない。
メンバーの「性格(何に価値を置き、何を嫌うか)」をプロとして分析し、相手が一番動きやすい環境をマネージャーがオーダーメイドで提供することである。
実例2:「辞めないで」と言わずに、退職願を撤回させた面談アプローチ
人間関係や、自身の保育スキルに悩み、精神的に追い詰められた若手保育士から「退職願」を出されたとき、あなたならどう声をかけますか?
「今辞められたら現場が回らないから、もう少し頑張ってよ」
「あなたのここが良いところだから、辞めないで職場に残って」
実は、こうした「引き留め(懇願)」の言葉はすべて逆効果です。なぜなら、視野が狭くなっている本人にとって「辞めないで」という言葉は、本人のためではなく「会社の都合(人手不足)」で引き留められているようにしか聞こえないからです。
私が退職面談を行う際、徹底しているルールがあります。
それは、「辞めないで」「残ってほしい」という言葉を、最初から最後まで一切使わないということです。
私が実際に行ったアプローチは以下のステップです。
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「悩みの徹底的な傾聴」:なぜ辞めたいのか、何が辛いのかを、一切の否定やアドバイスを挟まずに、底の底まで吐き出させます。
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「できていることの再確認(現状肯定)」:本人が「自分には能力がない」と思い込んでいる場合、周囲の先輩や保護者から感謝されている客観的な事実(数字やエピソード)を言葉にして伝えます。
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「本人が主導権を持てる選択肢の提案」:会社に残るかどうかではなく、「本人が今、心理的・物理的にできること」をベースに、働き方や役割の変更を提案します。
「会社都合の引き留め」を一切せず、100%本人の未来に向き合った言葉がけを徹底した結果、その保育士は自ら納得し、退職を撤回して現場へと戻っていきました。
【鉄則2】
離職の引き金は「人間関係の悪化」だが、最後の引き金を踏むのは「私の苦しみを誰も分かってくれない」という孤立感である。
マネジメント層に必要なのは、引き留める技術ではなく、相手の孤立を解消し「ここでは自分の存在が認められている」という安全基地を作ることである。
結論:「ありきたりの定着策」に予算を使うのは今すぐ辞める
多くの法人が、職員の満足度を上げるために福利厚生を充実させたり、懇親会を開いたりします。
しかし、現場の人間関係の根底にある「個々の性格の不一致」や「リーダーシップの欠如」を解決しなければ、水漏れしているバケツに水を注ぐようなものです。
定着率が高い強い組織を作るために必要なのは、以下の3ステップです。
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現場のリーダー(園長・主任)が孤独にならない本部のバックアップ体制
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職員一人ひとりの性格タイプに合わせた、関わり方のスイッチング
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危機(退職の兆候)を察知した瞬間の、心理学に基づいた面談スキル
私自身の、13年の現場叩き上げ、そして17施設260名のマネジメント経験から断言します。保育士・指導員の離職は、本部のマネジメント戦略次第で必ず防げます。
「うちの法人のマネジメント体制を根本から見直したい」 「園長や主任に、現場をまとめる具体的なチームビルディング術を学ばせたい」
そうお考えの経営者様、自治体関係者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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