保育コンサルタントの杉江です。
さて今回は、【保育施設を経営するということ】保育事業を経営する時に大切なマインド
になります。
本ブログ(著者・杉江)の具体的な信頼性は以下になります。
- 保育士を取得後、20年以上にわたり保育事業に従事している。
- 民間学童保育を創業し、5年間経営者として事業に携わる。(アフタースクール寺子屋 目黒区碑文谷3-1-4-16)
- 民間学童経営者として、5年間で登録者数2名→100名、通期黒字化を達成する
私は今まで自分でも保育施設を経営してきましたし、仕事柄多くの保育経営者と会ってきました。
素晴らしい経営者がいる一方で、従業員を大切にせず売上拡大に走るなど、個人的に間違った方向へ行っていると思う様な経営をしている方も多く見てきました。
その度に、なぜだろうといつも疑問に思っていましたし、また自分自身も従業員として嫌な思いもしてきました。
その中で今までの経験を元に、これから保育経営者となろうとしている方に向けて、本当に私が経営者として大切だと考える事を今回は書きたいと思います。
今回はやや厳しめの内容で非常に恐縮ですが、ご覧の皆さんには失敗をして欲しくないと心から思いますので書きました。
是非参考にしてもらえましたら嬉しく思います。
民間学童保育の、経営に必要な具体的な事については、こちらのブログをご覧下さい。
目次
【保育で一番大切なのは人】経営者にとっては現場の保育士が一番大切である
いきなり結論です。
どの仕事でもそうですが、特に保育事業においては、経営者にとって一番大切にしなくてはならないのは、自社の従業員だと考えます。
そして大切にされた従業員は、自分の部下やお客様を大切にする。
そうする事でお客様の満足度が上がり、その会社の評価や価値が高まる。
結果会社の成長に繋がるという流れです。
特に保育の仕事は商品がなく、人が保育というサービスを提供するので、そうなると人が一番大切という事になるかと思います。
本当に当たり前の事だと思うのですが、これができていない経営者が多過ぎと個人的には思います。
特に売上に対して、スピード感を持って伸ばしたいと考える経営者に多い、というのが個人的な感覚です。
この当たり前の感覚は本当に怖いもので、努力しなければすぐになくなって行きます。
自分の中の様々な誘惑に打ち勝ち、努力を重ねてこの感覚を継続していく。
経営者を目指す方には、この事は絶対に忘れて欲しくないと思います。
私自身過去に、この真逆の経営者のもとで働いていた経験がありました。
普段から我々従業員に対して尊大な態度。そしてひとたびミスをしたら大勢の前で暴言と共に叱責をする。
人としての尊厳を大切にされている感覚は一切なく、本当に将棋の駒程度にしか思っていないのだなと感じていました。
そして経営者本人はまさに「裸の王様」という状態で、誰もその本人には意見はできない状況。
そのことが会社としてどれだけリスクがあるのか、理解はされていないようでした。
最後にその経営者は、パワハラとセクハラが問題になり消えるように辞めて行きました。
多分誰からも惜しまれず、辞めていったのだと想像します。
絶対にこうなってはいけないと言う見本を見せてくれたのだと思い、今では感謝をしています。
本ブログをお読みの皆さんは、ぜひ反面教師にして頂けたらと心から思います!
【経営を甘くしない】こんなに補助金を貰いながらできる事業はない事を認識する
次にこの保育という事業、特に認可保育園と運営委託学童保育についてのお話しです。
両者ともに共通するのが、基本全ての事を税金が賄ってくれる、という事。
通常新たに認可や委託が決まると、施設の整備費や備品のお金、すなわち開業費用のかなりの割合が税金から出る事が多いです。
そして開業後に関しても、規定通り普通に運営を行っていれば、サービス業で最も大変な集客を行わずして決まった売上が立つ。
基本的には税金から、きちんとお金が振り込まれます。
経営の事だけを言いますと、経営者として、こんな楽な事はありません。
しかし冷静に考えてみて下さい。
他のサービス業の店舗、例えば飲食店や小売店を開業する時に、開業前から運営時までこんなに税金がもらえる商売はありますでしょうか?
今一度冷静に考えてみると、あくまでも認可や委託の保育事業は、基本的には公の仕事になります。
なので手厚く税金からの補助金が出るのです。
その事は絶対に忘れては行けません。
認可保育園や委託学童を長く経営をしていくと、そのことを忘れ、あたかも自分の実力で事業を広げていると勘違いが起きてくると想像します。
すると途端に経営が甘くなります。
保育サービスの質の向上を怠り、従業員を大切にする事を忘れ、売上を増やす事に取り憑かれます。
こうしてブラック保育企業、ブラック保育経営者が誕生するのだと考えます。
保育経営者は謙虚な気持ちと、公の仕事の一端を担っているのだという事を、けして忘れてはなりません。
【拡大の誘惑に呑まれない】拡大の誘惑地呑まれると、被害を受けるのは従業員と利用者
さて、前項の続きのお話しになります。
まず前提として、認可保育園・委託学童は、一施設目を出す時には非常に苦労をします。
役所の前例主義の壁が立ちはだかり、実績がない法人に対しては自治体はとことん冷たい対応になるため、
認可や委託の入札が通りにくく、はじめの一歩がなかなか踏み出せないというパターンが非常に多いと考えます。
しかし認可保育園や委託学童保育は、一度開業すると一気に自治体の見る目が変わり、結果、自治体の募集に応募がしやすくなり認可が取りやすくなる。
そして一旦流れに乗ると二施設目以降の開業の難易度が下がって、開業前から補助金をたくさん貰いながらどんどん開業することも可能になります。
そうすると、いわゆる多店舗展開というものが非常にしやすくなるという流れになってくるかと思います。
そしてこの多店舗展開ができ始めると経営的に色々なところが効率化でき、利益率が一気に上がります。
なので経営者としては多店舗展開の誘惑に非常にかられやすくなる。
これが売上至上主義のブラック経営者を生み出しているカラクリだと、個人的には考えます。
そして更に言いますと、長く経営をしていくと実績が付き、次の認可や委託に選ばれやすくなります。
そうなると自治体の方から頭を下げて、
「うちの自治体で是非保育事業をやってくれませんか?」
というオファーも来るパターンもあります。
自治体は、前例を非常に重んじる、前例主義が基本にあるからです。
ここで経営者は更に、大きな勘違いの沼にハマってしまいます。
「ああ、私は有能な経営者なのだな。私の実力で、自治体までも頭を下げてくるのだ。」
この様な悪魔の囁きが、自分の内側から出てきやすくなるのです。
もちろん、企業であれNPOや社会福祉法人であれ、売上や利益が上がる事は素晴らしい事です。
しかしよく考えてみて下さい。
・従業員に大きな負担が行っていませんか?
・従業員の給与を削りに削っているから、利益が出ているのではないですか?
現場で働いて売上を発生させているのは、現場の先生方です。
経営者ではありません。
絶対にそこを勘違いしてはいけないと思います。
従業員にも大切な家族がいます、大切な人生があります。
その責任を、きちんと背負う事ができていますか?
従業員を、駒の様に思っていませんか?
本ブログをご覧の方には経営者になった暁には、毎日絶対にこの事は忘れずに、自問自答をしながら経営にあたって欲しいと思います。
【最後に】あなたのやりたい事は本当に保育の事業ですか?
さて最後に質問です。
皆さんのやりたい事は、本当に保育ですか?
もしお金儲けがメインの動機であれば、絶対に違う職種、例えばITや金融、製造業などの方が多くの利益を上げるチャンスがあると考えます。
なので是非そちらの経営で頑張って頂けたらと思います。
それでも保育の経営に興味のある方は、この仕事はすぐに大きな利益も出ないし、命をお預かりするとても厳しい事業である事をまずお考え下さい。
その覚悟を持って、是非とも起業して頂きたいと思います。
そして起業後も、様々ない誘惑に負けずに、是非謙虚な気持ちを忘れずにお願い致します。
努力を続けることができると、毎日子どもたちの元気な声が聞こえ、使命に燃えるプロ意識の高い保育士たちが素晴らしい保育をしている。
その子どもたちや従業員が、日々成長をしている。
そして保護者の方々と試行錯誤しながら共に育ち合っていく。
そんな素晴らしい保育施設ができると思います。
そうしますと、楽しくやりがいもあり、充実した毎日が訪れると思います。
その日が訪れるまでは様々な困難が待ち受けていると思いますが、是非チャレンジして頂きたい、そう思います。
素晴らしく充実した日々が訪れるまで、どうか頑張って下さい!