保育コンサルタントの杉江です。

今回は、【民間学童保育を自宅開業する方法】についてお話ししたいと思います。

本ブログ(著者・杉江)の具体的な信頼性は以下になります。

  • 保育士を取得後、20年以上にわたり保育事業に従事している。
  • 民間学童保育を創業し、5年間経営者として事業に携わる。(アフタースクール寺子屋 目黒区碑文谷3-1-4-16)
  • 民間学童経営者として、5年間で登録者数2名→100名、通期黒字化を達成する

全体的な開業についてのお話は、以前のブログ、民間学童保育の開業(開設)の仕方にて書きました。
その中でも軽く触れていますが、今回はその中でも学童保育の自宅開業にテーマを絞ってお話をしていきたいと思います。(以前と内容が被る部分もありますので、その点はご容赦ください)

ちなみに、賃貸での自宅開業もは不可能ではないと思いますが、オーナーさんとの交渉や将来的な施設の建て替えの可能性などがあり、あまりお勧めいたしません。
ですので今回は、実際に持ち家を持っているという前提で、自宅開業をするというお話をしたいと思います。

国からの補助金等がない民間学童において、自宅開業は大きなメリットがあります。
少しでもお役立て頂けたらと思います。

民間学童保育の自宅開業のメリット【大幅な経費の削減。自由にレイアウトできる。土地勘がある。】

 

本項の結論を一言で言いますと、

・事業のリスクが大幅に減る。

という事になります。

そして細かくいうと以下の三点になります。

・大幅な経費の削減

・自由にレイアウトできる

・土地勘がある

順番に説明していきます。

・大幅な経費の削減

民間学童保育の自宅でののメリットのほとんどはこちらの理由になるかと思います。
民間学童保育の大きな固定費の1つとして家賃があります。

この家賃と言う固定費は、店舗型のサービス業を経営されたことがある方はお分かりでしょうが、経営する上において非常に重くのしかかってくる経費です。
その家賃がかからない、あるいはかかったとしても少額で済む、ということになりますと、経営上非常に大きなメリットと言うことになります。

また経営をしていく上において、自宅を自社のオフィスとして経費計上することができる可能性が高いかと思います。
そうすることで自社の税金を低く抑えることができたり、結果自身のローンの支払いについて、会社から一部負担してもらう様な形に持っていければ、メリットは更に増大します。

ただし、

・こう言った支払いの流れは可能か?

・いくら家賃を支払うべきか?

などについては、開業前に必ず税理士さんに相談し、法律的に問題が無い形で開業されてください。

結果、将来的に税務署から指摘され、さらに多くの税金を支払うことになってしまっては意味がありません。
こういった事は慎重に進めて頂くことをお勧めいたします。

開業費用の詳細に関しましては、

【民間学童開業費用一覧】具体的に何にいくらかかるのか詳しくお話します。

のブログに詳しく書いていますので御覧下さい。 

・自由にレイアウトできる

自宅での開業になりますので、部屋の使い方リフォームなど自由に行うことができます。
自身のイメージに合わせて部屋を作ることができるというのも大きなメリットになります。

・土地勘がある

自宅がある土地に開業することになりますので、土地勘があります。
これは学童保育を行う上で大きなメリットとなります。

①周辺住民の生活感

②地域の学習熱

③小学校の様子

などを肌で感じることができます。
これは大きなメリットとなると思います。
土地勘を生かして、開業を検討していきましょう。

 民間学童保育の自宅開業のデメリット【持ち家の取得のハードル・プライベートと職場の境界線がない・場所を選べない】

 

結論から言いますと以下の三点になります。

・持ち家の取得のハードル

・プライベートと職場の境界線がない(自身・家族)

・場所を選べない

順番に説明をしていきます。

・持ち家の取得のハードル

今回の前提として持ち家であると言うお話をしました。
当たり前ですが持ち家を買うと言う事は、数千万円の買い物と言うことになりますので、非常にハードルが大きいかと思います。

スタート時には多くの方は住宅ローンを抱えてのスタートと言うことになる事が予想されますので、開業前には、自身の財務状況をよく考える必要があるかと思います。

・プライベートと職場の境界線がない(自身・家族)

自宅での開業と言うことになりますので、自身のプライベートはもちろん家族のプライベートにも影響及ぼしてきます。
ですので事業開始前には、家族の説得と言うところが大変重要なことになってきます。

自身の家族に影響を及ぼすと言う事これは大きなデメリットになるかと思います。

・場所を選べない

メリットの項目では土地勘があるということが大きなメリットと言う話をしましたが、逆を言うと持ち家のある場所でしか開業することができません。

以前の「民間学童保育の開業(開設)の仕方」のブログでもお話しした通り、学童を開業する際には周辺の小学校数、住民の年収などを調べ、開業することが重要だと言う話をしました。
そういったマーケティングが一切できないと言う事が、デメリットと言えるかと思います。

民間学童保育の自宅開業の具体的な初め方 ~開業準備に取り掛かる前の話。~【まずは家族の説得。その後は個人事業開業届けを。】

 

まずは開業準備に取り掛かる前の話になります。

内容と、順番の結論から言いますと以下の通りになります。

1・家族の説得 

2・個人事業の開業届け(あるいは法人登記)

3・準備

・税理士・社労士への相談

・保育内容・料金表の設定

・必要に応じて学童用にリフォーム

・必要備品の購入

・集客・宣伝活動

・スタッフ採用・育成

順番に説明をしていきます。

1・家族の説得 

学童保育の自宅開業を開始する上でまずやらなくてはいけない事は何か?

それは自身の家族の説得です。

上記でも述べましたように、自宅での開業はご自身の家族のプライベートにも影響することになります。
ですので開業する際は、まずは全力でご家族を説得してください。
自身のこの事業にかける思いを誠実に伝え、もし納得してもらえなければ何度も何度も繰り返し説得をしてください。

学童保育の授業に限ったことではありませんが、自身で新たに事業を行うと言う場合は家族のバックアップが不可欠です。
反対された状況で家族の同意がないまま事業を開業する事は私はお勧はしません。

2・個人事業の開業届け(あるいは法人登記)

家族の説得が終わった後は、速やかに個人事業の開業届を出すことをお勧めします。
その理由は、事業準備に関わる全ての経費が開業費として経費にできるからです。
これは事業を始める上で非常に大きなメリットがあります。

ですのでこちらは必ず届け出することをお勧めいたします。
事業の準備に関わる物のレシート領収書は必ず取っておいてください。

そして個人的にはすでに自身で会社経営を行っていなければ、まずは個人事業として事業を開始することをお勧めします。

法人を作るとなるとその登録費用だけでもトータル数十万円かかってきますし、毎年の税金が重くのしかかってくるからです。

個人事業の方が事業開始当初は経費のコントロールがしやすいと言う部分がありますので、個人的には個人事業でのスタートをお勧めします。

民間学童保育の自宅開業の具体的な初め方 ~具体的な開業準備の話。~【料金の設定、備品の購入、集客・宣伝活動、採用・人材育成など、同時に様々な開業準備を行っていく】

 

3・準備

さてここからは、具体的な開業準備のお話しです。
具体的には、様々な準備を同時に行っていくことになります。
以下の事は優先順位はその時々によって変わってきますので常に考えながら準備を行ってください。

①税理士・社労士への相談

開業の準備あるいは、事業開始後の経費等について、まずは税理士さんにご相談することをお勧めいたします。
またアルバイト等従業員を雇用する予定がある方は、社労士さんに相談し、手続き等のアドバイスを受けてください。
これらは事業の経営にとって非常に重要なことになります。

後から大きく損をすることになる(罰金の支払い等の)可能性があるので、費用等を出し惜しみせずきちんと専門家の方に相談することをお勧めいたします。

それと同時に、日々の帳簿つけるために、クラウド型の会計ソフトを導入されることを個人的にはお勧めいたします。

②保育内容・料金表の設定

「値決めは経営だ」と言う言葉があります。
将来的な黒字を目指していく上で、料金の設定というのが非常に重要になってくると思います。

まず大きな方針として、小さな事業所が生き残る唯一の手段は大手よりも高い料金を頂戴し、その分サービスの質を圧倒的に上げていく。
と言う方法に尽きると個人的には思います。

ですのでそのような料金をいただけるように、保育内容サービス内容を考えていくということも重要になってきます。

何人の会員様に入って頂くとどのくらいの売り上げ利益が出て、結果事業を成長させていけるのか?
こういったことを何度も何度もシュミレーションし考えていくことをお勧めします。

③必要に応じて学童用にリフォーム

ここは非常に楽しい項目になるかと思います。
自身のやりたいことに合わせて部屋を自由にリフォームしてください。

⑴全員が集まる部屋

⑵勉強の部屋

⑶遊ぶ部屋

など目的に合わせて部屋を考え作っていって下さい。

また業者選びも慎重に、法外な料金を取られないよう、知り合いに紹介してもらったり、相見積もりをする事をお勧めします。

また今後部屋作りに関して重要になってくると予想されるものは、昨今のような感染症予防の観点から、換気がきちんとできるということになると思います。
窓の位置や空気の流れなどを見ながら、部屋を作っていきましょう。

④必要備品の購入

こちらも楽しい準備になるかと思います。
必要な備品をチョイスし、購入していきましょう。
ただし注意点が一点。

本当にその値段は妥当でしょうか?

テーブル、椅子、漆器、事務用品…
開業で気持ちが大きくなっている中で、デザイン性が高く材質の良い高い物をついつい買いたくなってしまいます。

しかし、それは本当に必要な備品ですか?

百均でも間に合いませんか?

初期投資をなるべく抑える事が後から効いてきますので、備品購入は慎重に行って頂く事をお勧めします。

⑤集客・宣伝活動

こちらの集客・宣伝活動は、開業前はもちろんのこと、経営者は開業後も永遠に行っていく作業になります。

まずは集客宣伝活動の準備のお話です。

この章は、以前のブログ民間学童保育の集客方法の内容と重なる部分が多いかと思いますので、是非そちらも参考にしてみて下さい。

まずは、宣伝活動の中心はwebになります。
こちら自施設のWebサイトは宣伝活動においてはマストになりますので、資金を惜しまず、質の高い制作会社へ投資する事をお勧めします。

私の経験からすると、問い合わせや予約の90%以上はWeb経由でした。

見た目や機能が十分ではないWebサイトは、信用問題に関わりますので絶対に手を抜かない方が良いと個人的には思います。
そのため、制作会社選びは慎重に行う必要があるかと思います。

続いての準備は、

⑴パンフレット

⑵配布用チラシ

の作成になります。

こちらもWebサイト同様、非常に重要なものになります。
同じく、デザインの悪いチラシ・パンフレットは信用問題に関わりますので、投資を惜しまないことが重要だと考えます。

こちらも製作会社さん選びは慎重に行う必要があるかと思いますが、もし可能でしたらWeb製作と同じデザイナーさんに、紙のデザインも頼んで頂いた方が良いかと思います。
信頼関係もありますし、Webサイトとの統一感も出てくるからです。

是非ご検討下さい。

さて、準備ができましたら、いよいよ集客・宣伝活動の実践です。
開業前に行うと有効な集客・宣伝活動は以下の通りになります。

⑴地元地域へのポスティング

⑵地元駅前でのチラシ配布

⑶説明会の開催

⑷資料請求の受付・送付

おまけ:駅への広告出稿

順番に説明します。

⑴地元地域へのポスティング

私が以前民間学童保育の代表であったときに、非常に効果があった宣伝活動です。
時間と体力を使いますが、地域の方々に直接存在を知っていただくことができる活動なので、開業後も基本的には継続してやり続ける必要があると思います。

⑵地元駅前でのチラシ配布

こちらも過去の私の経験の中で一定の効果があった活動になります。
ですので主に駅前でのチラシの配布活動と言うことを私はお勧めします。

しかしこのチラシの配布と言うのは非常にメンタル的に厳しい面があります。
特に学童保育のチラシなどはなかなか貰っていただけません。
ですのでそういった厳しい場面を乗り越えていくメンタルが必要となってきます。

⑶説明会の開催

こちらも開業前そして開業後も永続的に行ってきたい宣伝活動となります。
開業前は最低でも月1回、開業後も最低1月に1〜2回は行うことが有効であると考えます。

ちなみに私は前職では、毎月一回日曜日の説明会、そして平日の午前中に週一回開催をしていました。
自社のウェブサイトに説明会の日程を載せ予約フォームでご予約いただき来ていただくと言う流れがスムーズかと思います。

⑷資料請求の受付・送付

こちらは受けの集客活動になります。
自社のウェブサイトに資料請求のフォームを作り、ご希望の方には資料をお送りするという流れで、常時受け付けておく状況を作ってください。

さらに資料請求のセット内容についても常に最新の資料を送ることができるように更新し、また新しい資料ができたら追加するように常に考えておく必要があると思います。

保護者の方からしたら、説明会に比べるとハードルが低く、学童保育の内容を知ることができるため、非常に有効な方法であると思います。

おまけ:駅への広告出稿

こちらはおまけとなります。
駅への広告出稿は過去の私の経験からすると一定の効果がありました。
ですのでご検討いただくことも悪くは無いかと思います。

しかしこれはやったことがある方はわかりだと思いますが、広告出稿料が非常に高い。
事業を始めたばかりの小さな組織からしたら非常に高額な投資と言うことになります。

ですので本当に余裕がある方に限りこちらの方法をお勧めいたします。

⑥スタッフ採用・育成

さてこちらの項目も非常に重要な項目となります。
以前のブログでも述べましたが、学童保育の質の全てを決めるのが人 =従業員と言うことになります。
ですのでスタッフの採用並びに育成と言うのは非常に重要な項目になります。

開業直後は、正社員の雇用は考えずに、まずは非常勤スタッフ(パート・アルバイトスタッフ)の採用を考えるのがよいかと思います。
詳しくは以前のブログ、『民間学童保育の施設長候補(パートスタッフ)の人材育成について』をご覧下さい。

民間学童保育の自宅開業後の、運営のコツ【開業後は、一人で全てやる位の意気込みで・当初は会員5人を目指す・将来的には、最大で15名くらいに・基本的には常に集客活動を行う】

 

さてここからは、開業後の運営のコツについて少し話をしていきたいと思います。

結論から言いますと以下の四点になります。

・開業後しばらくは、一人で全てやる位の意気込みで

・当初は会員5人を目指す

・将来的には、最大で15名くらいの会員を設定し集客をする

・廃業するまで、基本的には常に集客活動を行う

順番に説明をしていきます。

・開業後しばらくは、一人で全てやる位の意気込みで

事業を開始するとついつい人を多く雇いたくなります。
ですがその気持ちはぐっと抑えてください。

人件費と言う固定費は非常に経営上重くのしかかってきます。
ですので開業後しばらくは1人で全てやると言う位の意気込みで働くのが良いかと思います。

結果上記でも述べましたように、まずはアルバイトパートスタッフ1名から2名の雇用で充分だと思います。

・当初は会員5人を目指す

さて集客宣伝活動を行い、開業直後は何名位を目標にすれば良いか?

結論、まずは会員5人の獲得を目指しましょう。

これを聞いて少ないと思われる方もいるかと思います。
しかし看板も何もない学童保育が5名を集客することは、とてもハードルが高いと思ってください。

個人的な感覚になりますが、看板も何もない民間学童保育を開業した場合、最初はおそらく0から2名位というのが妥当な線だと考えます。
いきなりスタート時から会員を集められた方がいらっしゃったら、その方はとても優秀な方だと思います。

ちなみに恥ずかしながら、私が7年前創業した時はスタート時は2名からのスタートでした。
今思えば、当時の自分はやるべきことを全てやりきってなかったなと思います。

当時の自分は本当に甘かったなと、ただただ反省です。

・将来的には、最大で15名くらいの会員を設定し集客をする

続いて、施設の定員の話になります。
自宅開業となると、なかなか数十人と言うお子さんを受け入れる事は難しいかと思います。
ですがある程度お子さんを受け入れないと形的には非常に苦しくなると思います。

ですので個人的な感覚ですが、最大15名位受け入れられるような施設が理想的かと考えます。

これは料金をいくらに設定しそして何人を受け入れたら黒字になるのかということを、開業前に計算をし尽くし、定員を決めていただくことをお勧めします

・廃業するまで、基本的には常に集客活動を行う

前の項目でも散々いましたが、集客活動と言うのは基本的には終わりはありません。
経営者としては上後も毎日毎日様々な角度から集客を行っていく必要があります。
その覚悟を持って開業をされてください。

まとめ【結論は、自宅開業には大きなメリットはあるが、大きく儲けることは難しいと考える。それでも学童保育事業に思いがあるのならばやる価値はある。】

 

まとめに入ります。

・大きなメリットとしては経費のコントロールがしやすいため廃業しにくい。

・デメリットとしては、家族の説得のハードルの高さ。そして多くのお子さんを預かるスペースがないので大きな売り上げを上げにくい。そのため大きく儲けることが状況的に難しい。

昨今のようなウィルス感染などの危機的な状況に陥った場合、経費のコントロールがしやすいため廃業しにくくなります。

それは事業を行う上で非常に大きなメリットになるかと思います。

しかし数字上大きく売り上げを上げることができないという一面もあります。
したがって経営者自身が数千万円の報酬を得るような、大きなビジネスにはなりにくいということも反面言えるかと思います。

それでも学童保育をしたいと言う熱い思いがある方はぜひ学童保育の自宅開業を検討してみてください。

今回のブログがその参考になれば嬉しく思います。

頑張ってください!